認知症ブログ H28.9.25号 (内容限定版58)

名古屋フォレストクリニック 1
現在、平日の初診予約は、待ち1週間以内になりました
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人気のある土曜日を除いた、平日の初診待ちは、日を選ばなければゼロ日になりました。いままで、病状安定した再診患者さんの投与日数を長期にすることで、初診待ち日数を短縮する努力をしてきましたが、通院患者さんは希望があれば短期処方にできます。

つきましては、初診待ちは思いたった週に受け入れられますので、平日の診療時間内にオペレーターに予約をしてください。メールでのご予約はできません。なお水曜日は休診です。(今年は10月15日、12月24日休診)

紹介状、画像は必要ありません。お薬手帳は必携です。できたら介護者がお付き添いください。

患者さん本人が来られない自費相談の場合は、画像があればお持ちいただき、スマホに本人の顔か姿勢、様子を撮影してきてください。(動画でなくてよいです) 本人が来る場合は保険証、高齢者証、自立支援証、精神障害手帳などすべてお持ちください。1つも欠けないようにお願いします。
予約は電話 052-624-4010 (朝8:30-12:15、午後2:00-5:15)

LPC症候群
右に特集号のバナー(入口)をつけました(H27.1-H28.8)
PD, PDD, PSP, CBD, VD, NPH,筋緊張性ジストロフィー,ALS, FTD-MND typeといった歩行障害系の治療成果でこの認知症ブログで紹介したものを、1年8か月分掲載しました。文章はなく、スライドだけです。
スライド入り口

LPC症候群2
初めて目撃!PSP-Pに奇異性運動反応!まさにパーキンソンと同じ
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75歳男性。非常に知的な職業をしていた方で、杖で両脇から2人の子供さんに介助されて初診した。改訂長谷川式スケールが20という触れ込みだったが、難聴だけでなく語義失語になっており0点だった。

施設で問題行動があり前頭側頭葉変性症と診断した医師もいるしパーキンソン病と診断した医師もいるという。ウインタミン、クエチアピンが処方されており、コウノメソッドじゃないか!と驚いたが、コウノメソッド実践医もかかわっていた。点滴も始めていたがあまり効かないという。SPECTでは完全に前頭葉が抜けていたので、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の線は消えた。念のためCTを撮影しなおして戻ってきたとき、彼は入口のドアレールの前でスピードを落としてから猛烈な小刻みから一転して大きくまたいだ。奇異運動反応だ!とても久しぶりにパーキンソン病の姿を見た。

ということは、前頭葉血流低下、問題行動、限りなくパーキンソン病に近い運動を1疾患で説明できるものはPSP-Pしかないだろう。眼球も下に動いていない。私がそう宣言すると娘さんは前医(3人)の中で朝田隆先生はPSPを疑っていたとのこと。さすが朝田先生!感動した。この分野で自分と同じレベルの医師に出会うことはほとんどないが、火星で人類に会えたような気がする。

今後は、新横浜セット、レミニール2mg×2、フェルガード100Mプラス(新製品)3錠で攻めてゆく。娘さんが「治るのでしょうか」と言うので、遠くから来たのだし治しましょうよと言っておいた。次の実践医候補は、入院可能な病院の3人に絞られている。

奇異性運動反応
 奇異性運動反応とは,歩行などの動作がほとんどできない患者が,何らかのきっかけで動くことができるようになる現象です。例えば,床に縞模様があるとそれをまたぐように歩けたり,自発的に全く動けないパーキンソン患者さんが,ボールをなげるとキャッチできたりします。これは,パーキンソン病になると自発運動が困難になるが感覚刺激で運動が誘発できることを示しています。
(ネットより) 
 パーキンソン歩行で、普段歩きにくいのに気合を入れると歩けるという現象は、前頭葉機能の関与が大きい。号令をかけたり音楽に合わせたりしても歩きやすくなる。だから前頭葉萎縮の強いPSPでは当然おきそうなものだが、不思議とパーキンソン病でしか見たことがなかった。


KONO METHO INTERNATIONAL 1 オータムセミナー
高齢患者に対応するための新しい医学
老年医学という学問がありながら、高齢化する患者への適切な治療法の革新的な知恵が提案されてきたとは思えません。また、東洋医学と西洋医学の有機的な融合に成功した事例もあまりないようです。

高齢患者は、老衰が加わった病態や、大脳内で認知症責任疾患が重複することもあり、画像機器だけでは鑑別診断に限界が生じますし、各認知症病型の診断基準は、半数の患者で役立ちません。

それを逆手にとって考えると、高齢認知症の診断は画像機器を持たない かかりつけ医でも、ある程度参加できることに気づかされるのです。加えて、東洋医学のように対症療法に徹した処方を心がければ、介護者がかえって困るような副作用(興奮性、歩行障害性)を出さずにすみます。

コウノメソッドでは、画像機器なしでおおかた85%の鑑別診断を行い、患者個々に表出している問題となる症状を確実に改善させる処方をおこなえるよう、治療方針に直結した患者分類を提案しています。

そして、著者は東洋医学的に分類した患者の体質、キャラクターに沿って西洋医薬を処方し、つめの微調整を漢方とサプリメントで補うという東洋―西洋医学の融合を行っています。この手法が、他の治療法より高い改善率を達成できるのは当然でしょう。

東洋医学的発想で患者を分類して対症療法を施す
認知症の種類は無数にあるのですが、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、腦血管性認知症(VD)が4大認知症であり、これらをまずしっかり知ることから始まります。ピック病はFTLDの一種です。問題は、鑑別診断はそれほど容易ではないということです。

高齢者は薬物代謝動向が薬剤の半減期だけでは推し量れず、DLBは薬剤過敏性があります。臨床試験は比較的元気な、比較的若い症例に施行されるというバイアスを考えると、用法用量より少なめに投与して観察してから慎重に増量し時には減らす(センサリング)のが望ましいです。

用法用量はエビデンスから決定されたことなので、患者個々には合わないこともあり、個別化医療を行うことがかかりつけ医に求められます。目の前にいる患者は世界で一人しかいない症例なので、治し方は医学書に書かれていない、患者の身体と対話して処方量、投与法を決めるという態度が必要です。コウノメソッドは、個別化医療マニュアルと言っても過言ではなく、東洋医学的に西洋医薬を使うと思ってください。

高齢化時代の疾患重複と機能画像の限界
患者の高齢化でおきていることは、4大認知症が孤島のように個別に存在するだけではなく、二者が混合したり、延命するため長年のうちに病理学的、症状的に移行したりしうるという変容をきたすということです。
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混合型認知症と言う言葉があります。過去にはATD+VDを指していたのですが、最近はDLB、FTLDも結構多いことがわかりましたので、DLB+VD,FTLD+VDも存在するわけです。ですから私は単に混合型認知症とは呼ばずに、それぞれをアルツミックス、レビーミックス、ピックミックスと具体的に呼ぶべきと考えています。なぜなら使う薬が違うからです。

アルツミックスならドネペジルだけでなく、おとなしい患者なら脳血管拡張作用のあるニセルゴリン(興奮系)も加えるべきだし、脳梗塞再発予防にシロスタゾール(先発品プレタールの処方を推奨)も加えるべきでしょう。

DLBに正常圧水頭症(NPH)が合併する場合、傾眠に拍車がかかります。その場合、シチコリン静脈注射(500-1500mg)はぜひ行うべきです。NPHを内科的に歩かせる有力な治療はフェルガードというサプリメントです。

90代の剖検脳で、6種の疾患が重複していたという報告もあります。もはや、対症療法でしか正しい方向の治療には向かわないでしょう。


レビースペクトラム
脳内に老人斑とレビー小体を両方持つ患者は結構多いと言われています。
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ですからDLBスペクトラムの中でATD寄りとパーキンソン病寄りの患者を両極として、真ん中にDLB典型例がいます。これらのバリエーションで、患者個々には処方する薬(アセチルコリン系とドパミン系)の比率は変わってきます。

個人差があまりにも大きいDLBを一言でアリセプトが適応症として認められた疾患と理解してしまうのは、無責任で危なっかしいことです。この薬は、パーキンソニズムの強い患者にはむしろ禁忌ですらあるからです。アセチルコリン賦活は相対的ドパミン欠乏をおこすからです。

DLBというスペクトラムの広い疾患名は、個人差を無視するという西洋医学の未熟さを露呈させます。アリセプトを処方すれば多くの副作用を経験するでしょう。もっとも小著(河野2016)を読むまで副作用と気づかなかった医師が多いですが。さらにDLBには、薬剤過敏性という大きな障壁もあります。

スペクトラムの広さ(個人差)と薬剤過敏性という二つの障壁を持つという意味で、DLBこそが個別化医療のもとで処方をアレンジ・加減しなければならない患者群であり、医師の臨床能力を露骨に見せつけるものです。

残念ながら、もっとも強い副作用をおこす医師は神経内科医です。その理由は、パーキンソン病とDLBでは処方の仕方が全く違うという教育を受けていないからでしょう。そして、患者の薬剤反応を見ながら用量を調整してゆくという慎重さに欠けます。DLBは認知症の21%を占めると言われており、後期高齢患者に限れば、かなりの頻度になります。

著者は研修医によく「レビーを制する者は認知症を制する」と申しております。DLBの治療専門書は、いまのところ著者しか出版しておりません。(河野2014
文献 
河野和彦:認知症ハンドブック② 認知症の薬物療法〈改訂版〉。フジメデイカル出版、2016予定。
河野和彦:レビー小体型認知症〈改訂版〉即効治療マニュアル。フジメデイカル出版、2014。


FTLDスペクトラム
40歳台からの若い認知症で、反社会的行動(万引き、非協調性)で社会問題となっている認知症にピック病があります。

コウノメソッドの三大柱の筆頭である「介護者保護主義」には、この最も陽性症状の強い認知症に抑制系薬剤(主に抗精神病薬)を躊躇なく処方すべきことを推奨しています。

ピック病は、ユダヤ人が発見し、日本人が独立疾患と認めた経緯などからアメリカでは軽視されており、大脳組織のピック球がなくても前頭側頭葉変性がおきるため、全世界的には軽視されがちな病名のようです。

25年前にマンチェスターグループによって、ピック病は前頭側頭葉変性症(FTLD)の認知症症候群の中の一亞系に編入されました。

しかし、最近FTLDの失語症候群には、アルツハイマー型認知症を病理基盤としやすいLPAを新設したことで、前頭側頭型認知症と切り離す傾向があります。もともとあったFTDが復活し、FTLDは一過性に消えてゆく運命です。このように海外の勝手な分類に日本の臨床医も振り回されています。

ここで、スペクトラムという言葉を用いた理由は、意味性認知症(SD)がやがてピック症状も加わってくるという時系列のスペクトラムという病状変容の意味です。
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DLBの場合は、アルツハイマー病変とパーキンソン病変の患者個々における比率の違い、と老人斑がレビー小体に封入されてゆくという時間的病理変容の両方の意味でスペクトラムと言っています。
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認知症をおこすのは前頭葉萎縮。失語をおこすのは側頭葉萎縮ですが、前頭側頭葉変性症(FTLD)は、両方セットで萎縮します。前頭葉萎縮のほうが強いのに失語、側頭葉萎縮のほうが強いのにピック症状が強い患者もいますが、たまたま症状が予想外のものから出たというだけで、結局は語義失語のあるピック病、という状態にみななっていきます。

話をまとめますと、前頭葉タイプの認知症は、現在FTDと原発性進行性失語(PPA)にわかれます。

FTDには、Pick type、FLD type、MND typeがあり、PPAには、SD, PNFA, LPAがあり、LPAだけは後方型であるATD病理を持つ患者が多いです。ほかは前方型です。
PPAは臨床病名であり、病理基盤を問いません。SDの病理にはピック病、PNFAにはCBD、LPAにはATDが多いとざっと覚えましょう。CBDは、前方型(ピック症状)+後方型(空間失見当)の病状が混ざっています。
注釈:意味性認知症(SD) 
進行性非流暢性失語(PNFA)
logopenic progressive aphasia(LPA)、
皮質基底核変性症(CBD)
進行性核上性麻痺(PSP)

PPAは、脳卒中による失語と症状が対応しており、SDは感覚失語、PNFAは運動失語、LPAは伝導失語と同じような病態を示すと言えばわかりやすいでしょう。
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著者は、PSP、CBD、FTD-FLD type、FTD-MND typeの実際の患者とCT画像を経験することで、すっきりした分類をすることができました。大きな発見として、認知症ブログで1日だけ公開しました(平成28年7月4日)今回も発表しません。
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NON ONLINENEWS 参照

これで著者は、マンチェスターグループより理解が上回ったと感じます。なにより患者の経験数がものをいいます。この発見を機にで、マルチスライスCTの矢状断で頭頂葉萎縮を確認することでCBDの初期も気づけるようになりました。


コウノメソッド分類―病理基盤から独立―
病理診断は生前の患者を救うことにさほど貢献しないので、その鑑別診断に医療費と時間を浪費することなく、患者のキャラクターで分類し、現在問題化している患者の症状を対症療法で治すことに集中します。当然介護者の評価は高くなります。顧客満足度と言えるものです。

そして、経過を追うごとに病状が変容するため治療方針も変化させていきます。このことからも早期に鑑別診断を行う意義は半減します。

例えば、DLB患者がわがままになってピック症状が加わったケース、FTLDにパーキンソニズムや幻視が加わったケースをLPC(レビー・ピック複合、Lewy-Pick complex)と呼ぶことにしています。認知症の約15%を占めます。こう包括的表現をすることで、患者に問題症状が複合していることを認識できます。その認識は副作用をおこさないような処方に医師を導きます。

LPCはレビースコアとピックスコア(後述)の両方がおおかた5以上の患者ですが、そのグループの中からDLBらしくない患者がいる場合は、とりあえずLPC症候群としておき、経過を観てゆくうちにそれがPSP,CBDなどのPick complex、あるいは多系統萎縮症(MSA)などの神経難病であることがわかってきます。

患者の具体像―イメージですぐに診断をー
プライマリケア医には難解な病名が続いてうんざりしているかもしれません。そこで、具体的にどのような患者か平均像・典型像を提示します。

アルツハイマー型認知症: 正常にしか見えない75歳。明るくて元気。いざ改訂長谷川式スケールをやってみると20しかとれず、本人は、もの忘れはないという(病識欠如)。遅延再生(三単語を想起する)が特異的に不得意で6点満点で1点しかとれない。野菜は、同じものを何度も繰り返して言う。途中でネコ(三単語の一つ)と言ったりする(保続)

レビー小体型認知症: 非常にまじめな人で数年前から寝言、レストレスレッグ症候群(夜中に勝手に手足が動く)があった。うつ表情になることが多く、幻視がみえていることを自分でわかっている。肘に歯車様筋固縮がある。前医がATD、パーキンソン病、うつ病と誤診していることが非常に多い。アリセプトが5mgに増量になったときに足がでにくくなってやめた既往がある。
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ピック病: 診察室で腕や足を組むような横柄な態度をとる65歳。運転が荒くなって、よくこすっているが意にも介さない。家族に注意されると過敏に反応してスイッチが入ったように激情するが、その後けろっとする。甘い炭水化物(ドーナツなど)を妙に好むようになり、まんじゅうだと1箱食べてしまう。家族のおかずと食べてしまうこともある。掃除せず、つまらないものを集めてきて浪費が激しい。

意味性認知症: 言葉が通じなくなったと家族が感じる。道具の操作がわからなくなり運転の事故が頻発し免許を返した。便器の座り方がわからなくなり逆に座ったりする。自信がないのか、しゃばらなくなってきた。ほとんどの患者がATDと誤診されている。すこし怒りっぽくなってきている(ピック化)。ドネペジルで易怒に拍車がかかっている。

パーキンソン認知症:8年前からパーキンソン病には間違いないのだが、最近記憶が低下し改訂長谷川式スケールは18しかない。片手に優位な振戦があり歯車現象もしっかりある。幻視は出たことがあるが、それはパーキンソン病治療薬を多く飲んだ時だけである。薬剤過敏性はない。

進行性核上性麻痺: パーキンソン病治療薬があまり効かず、急速に歩きにくくなっている。手を振って歩くわりに急に前や後ろに倒れるので前額に傷がある。目がくりくりしてピック病のようにあっけらかんとし、DLBのような深刻さがない。グルタチオン点滴が非常に効きやすい。やがて首が後方に屈曲し(頸部ジストニア)、胃瘻になる。CTで第三脳室拡大が特徴。
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皮質基底核症候群: 最初は手の細かい動きができなくなり、どちらかの手がより動きにくい。ゆっくりと進行し、やがて歩きにくくなる。動作がおそく、腕はふって歩く。何を服用しても効かずグルタチオン点滴も効きにくい。復唱困難でまったくしゃべらなくなってゆく。CTで側頭葉皮質萎縮、頭頂部の脳溝開大に左右差がある。

多系統萎縮症: ふつうに歩いているように見えるが左右にふらつき、Uターンのときは側方に激しく転ぶ51歳。めまいを訴え眼振がある。タンデムゲイトはまったくできない。排尿障害、低血圧、構音障害、発汗過多がみられる。急速に歩けなくなってゆく。神経内科からセレジリンが処方されているが効かないという。改訂長谷川式スケールは25くらい。グルタチオン点滴が非常に効く。シチコリン250mgを隠し味で入れることが重要。自律神経症状がなく、予後良好なものに皮質性小脳萎縮症(CAA)がある。
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LPC症候群 1 
PSPイメージトレーニング
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架空の患者をここに想定します。名古屋フォレストクリニックの外来ではどのような会話がされているか、紹介しましょう。
69歳男性 改訂長谷川式スケール18 妻に介助されてゆっくり入室
観察 ニコニコしていて額に傷がある
アンケート 易怒、幻覚に○がうってある
前医処方 メネシット(100)6錠 マドパー3錠 ドネペジル5mg
医師 ずいぶん薬が多く出されているようですが、神経内科の先生はどう診断されていますか。
妻  最初はパーキンソン病と言われていて、最近レビー小体型認知症ということになりドネペジルが追加されました。
診察 歯車現象はほとんどなく、大きな声でゆっくりしゃべる
医師 体が結構柔らかいので、パーキンソン病治療薬はそんなにいらないと思うのですがね。それにドネペジルを5mgも飲んだらよけい歩けなくなる。
妻  ドネペジルが出てから食べられなくなり、よけい歩けなくなりました。最近は横になりたがって、急にだめになってしまって。先生の講演で患者が歩き出すビデオを診たケアマネジャーさんが、一度みてもらったらって教えてくださって。
医師 なにがきっかけでドネペジルが出たのかなあ。
妻  幻覚がひどくなったからです。
医師 これだけPD治療薬を飲ませたら出ますよ。なぜドネペジルなのかなあ。
妻  ドネペジルは先生のブログでは、歩行にはよくないと書いてあったので、ほかの薬にしてくださいと頼んだら、レビー小体型認知症にはアリセプトが認可されたからちょうどいいよって。だけれどもうちは家計が厳しいので後発品にしてほしいって頼み込んだのです。そうしたら先生は、先発品しか出せない規則なんだけどなあ、としぶしぶ言われました。後発品が出ているのに先発品しか認められないって、わけがわからないです。しかもそれで元気もなくなってしまって。
医師  いろいろご不満はあるでしょうね。レビーは、こんなに子供のようにニコニコしませんよ。
診察 眼球の動きがわるい。
医師 PSPだと思いますね。PD治療薬で歩行させようといしなければいけません。ドネペジルはすぐに全廃しましょう。
妻  PSPってなんですか?
医師 進行性核上性麻痺と言って、パーキンソン病の類縁疾患なのですが、PD治療薬が効きにくくて急に倒れるので、ほら顔に傷がありますよね。
妻  注意せずにどんどん歩こうとするのでいきなり後ろに倒れたり、階段から落ちたりします。目が離せられなくて、私もノイローゼです。
医師 それってPSPの特徴なのです。ズリズリーと転ぶのではなくて突然倒れる。ものすごく激しい転び方ですよね。介護用品店で保護帽を買ってください。1万円くらいです。目玉が上下しないから、階段を降りるときに下がみえていないのです。
妻  そういえば下をみるときに首を大きく曲げてみようとします。
医師 神経内科の先生は、眼球の動きをみないのですか。
妻  1年前に診ましたが、そのときは動いていたのでレビー小体型認知症ということに。
医師 PSPでも眼球は動く患者がいるし、急激に動かなくなってゆくので、何度も調べたほうがいいよね。それに診断も最初からボタンの掛け違いで、絶えずPSPかもしれないって思っていないとレビー路線にいってしまうよね。最近は幻視が出たら絶対レビーと思う医者が専門医でもいます。
診察 見学の医師にピックスコアをつけてもらう。
医師 吉田先生、ピックスコアなん点でした?
吉田 7点です。LPC症候群ということになります。
医師 そうでしょうね。レビーの暗さがないから見た目、PSPですよ。
妻  ここ1年ニコニコしていて、違和感があるんです。怒りっぽいし甘いものをほしがるようになって。子供みたいです。
医師 それはピックコンプレックスといって、前頭葉機能がおちるグループの中にPSPが入ってくる。レビーは入らないのです。キャラクター的にレビーとPSPは感じが違います。しかも大きく腕をふって歩くでしょ。パーキン系なわけないですよ。
吉田 神経内科学でパーキンソン病類縁疾患に入れてしまったことが間違いのもとだったのでしょうね。
医師 まあ仕方がないけどね。それよりコウノメソッドでピックスコア、レビースコアをつけておいて、どちらも高い患者をLPC症候群とし、その患者がレビー小体型認知症でいいのかそうでないのかを考えてゆくという道筋が間違いないですね。
レビースコアが高いけれど明るいキャラクターはPSPですよ。CTで確認すれば前頭葉萎縮は強く、第三脳室は大きく広がっている。ハミングバードサインが陰性でもPSPと自信をもって言えるでしょう。
じゃあ、吉田先生、PSPは側頭葉と頭頂葉は萎縮していますか?
吉田 いえ、PSPは前頭葉だけ萎縮しています。ピック病と意味性認知症のように前頭側頭型認知症とは言えないです。
医師 じゃあ、治療はどうしますか。
吉田 進行が早いので、今日コウノカクテルをしたいですね。
医師 今日はCTも撮影したから保険診療日ですね。自費診療をしてもいいのですか。
吉田 混合診療になるのでできません。するなら無料です。
医師 何をどれくらい入れたいですか。
吉田 この重症度だとグルタチオン2200mgくらいで確実に効くと思います。
医師 ほかは必要ですか。PSPですから単独でいいと思います。無料なので他に使う義務はないでしょう。ビタミンCなどは、明日以降に来ていただければ。
医師 処方はどうしますか。
吉田 歩行障害系ですからドネペジル中止、当然リバスチグミンです。歯車現象は軽いのでメネシット1回100mgは多いですね。妄想もあることだし、ドパコール50mgを6回投与にしたほうがいいと思います。
医師 幻視・妄想対策は
吉田 とりえず転びやすいのでセレネースを考える前に抑肝散にしておきたいです。たまにシチコリン1000mg単独静脈注射もいいと思います。
医師 スイッチ易怒はどうするの?
吉田 肝臓は悪くないのでウインタミン4mgを屯用で渡しておいて、ショートステイ先で問題化したら服用してもらうようにしましょう。この量なら歩行に影響はないと思います。
医師 ドネペジルからリバスタッチにスイッチして記憶低下がおきたらどうするの?
吉田 速めに2段階目の9mgに引き上げます。
医師 そうですね、ドネペジル5mgと等価のリバスチグミンは9mgだよね。だけど、LPC症候群は、リバスチグミンでよけい足が重くなることがあるけれど大丈夫ですか
吉田 家族にその副作用を説明しておいて、そうなったら9mgパッチをハサミで25%ほど捨てるように言っておきます。

解説
診断 レビー小体型認知症と誤診されていた比較的若い患者。ピックキャラクターがあること、歩容(アームスイングがある)、CT所見からPSPと診断変更。
対策 歩行阻害をしていたドネペジルを中止。もっとも歩行を治せるグルタチオンが効くかどうかを確認。幻視・妄想対策にはLドパを少量頻回投与に変更。ピックコンプレックスの疾患なので、易怒にはピックセットを適応。家族に余裕があればフェルガードも推奨。
補遺 MIBG心筋シンチでH/M比が1.6を大きく上まわる(おおかた2.0以上)であることを証明すれば、PDD,DLBでないことは確実にできる。(確診度80%)
無駄な検査(DaTスキャン、MRI、SPECT)は発注しないこと。多発梗塞によるパーキンソニズムが疑われればMRIは行うべきである。

映画THE BETLES EIGHT DAYS A WEEKを観て
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祝日の朝9:30にビートルズの記録映画(上映初日)を観てきた。2時間半なのだが、本編は90分で、最後の30分は56000人の観客を集めたニューヨーク・シェアスタジアムでの鮮明なライブ映像がおまけと言う形でついている。5000人しか収容できないホールでコンサートをすると、外で5万人が騒ぐと言われていた。

ジョージやジョンが、もうライブはやめたいと言いだしたのが、全米ツアーの大雨の中でのライブや、ベッド1つしかないホテルで4人宿泊したり、罪人を輸送するトラックで球場から出てゆく経験をしたときである。その後彼らは二度とライブをせずに、スタジオにこもって名作アルバムを出していった。このストレスに1人で耐えていたプレスリーは大変だっただろうなと漏らす一幕も。

当時の社会人から言うと、ちょっといかれた若者と映ったであろうが、アメリカ南部での講演の際に、黒人観客は隔離するという主催者の動きがあり、4人はそれをさせなかった。そのビートルズライブ以降、黒人はライブで差別されなくなったという。

ビートルズが名曲を書く確率がモーツアルトに並ぶという評価もあり、歴史的なバンドであったことはここに説明するまでもない。映画を真剣に観たが、ビートルズの演奏や歌唱は非常に丁寧である。大観衆で、モニターアンプから仲間の音も聴こえない状態で、仲間の腰の振りなどからテンポを合わせていたという。驚くほど合っていたという。

ビートルズファンにとってほとんど切れ目のないシェアスタジアムライブのカラー映像と修正された音源のクリアーさとボリュームは必見であろう。私のような素人に限らず、世界中にビートルズのコピー演奏で飯を食っている人たちがいる。彼らはこぞってこの映画でタイムスリップを体現しにくることであろう。当たり前だが、いくらテクニックがあっても自分たちより本家のほうが上手で色気があることを認識するに違いない。

認知症治療研究会1 
東北支部10月23日(日)午後1時開幕
認知症治療研究会の東北支部会を開催します。形式張らず、ざっくばらんに、認知症について大いに語り合う場にしたいと思います。ご興味のある皆さまのご参加を歓迎いたします。
●日時 10月23日(日) 13時30分開始(13時開場)
●場所 岩手大学 銀河ホール(岩手県盛岡市上田三丁目18番8号)
●対象 認知症治療に興味がある方であればどなたでも(*認知症治療研究会の会員の有無は問いません)
●内容
1.オープニング 13:30-13:50
*河野先生(名古屋フォレストクリニック)のあいさつ動画
2.教育講演 13:55-15:15
「レビーとピックを見極める」 松嶋大(ものがたり診療所もりおか)
3.ケースカンファ&自由討論 15:30-16:55
*2,3ケースを予定
●参加費 会員 1,000円 一般 2,000円
●申込方法 下記を記載の上、事前申込をお願いいたします。送り先は事務局までメール(monogatari.morioka@gmail.com)もしくはFAX、電話でお願いします。
①お名前 ②所属 ③職種(資格) ④認知症治療研究会の会員か否か ⑤ご連絡先 ⑥懇親会参加希望の有無
●ケースカンファのケースの募集 日頃お困りの事例を当日ご持参下さい。参加者間で議論したいと思います。なお事例が多数の場合にはご遠慮頂く場合もございますのでご了承願います。
●主催 認知症治療研究会 東北支部設立発起人会 
松嶋大(ものがたり診療所もりおか)長谷川 幸弘(長谷川医院)小原 秀和(介護老人保健施設なごみの里)
●事務局(各種問い合わせ先) ものがたり診療所もりおか(担当:小林) TEL019-613-3171 FAX019-636-1630


抗認知症薬の適量処方を実現する会 実践的認知症セミナー
日時:2016年10月15日(土)午後5時~午後7時
場所:岩崎学園新横浜1号館リバブルホール(JR横浜線「新横浜駅」より徒歩3分)
講師:中坂義邦先生(新横浜フォレストクリニック 院長)
   平川 亘先生(池袋病院 副院長)
参加費:1,000円
お申込み(法人抗認知症薬の適量処方を実現する会HPより)
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ドクターコウノ2016年講演 
●11月5日(土)夜7:30-9時 徳島県臨床内科医会講演会(徳島県医師会館)
東洋医学的発想・アンチエイジングで認知症を改善させるーコウノメソッド解説ー
問い合わせ:ツムラ 書籍・DVD販売あり。高橋会長の意向で内科医以外にも広くお誘いしています
●11月6日(日)朝10時―正午 徳島一般講演 徳島駅から徒歩10分「とくぎんトモニプラザ(300席)」認知症介護のコツーくすりの効用と副作用―
●11月30日(水)18:30-19:30 長久手南クリニック認知症勉強会
認知症患者の前頭葉機能を考える

ドクターコウノ2017年講演 
●2月26日(日)第三回認知症治療研究会(パシフィコ横浜)
●2月27日(月)サンケイホール
●3月19日(日)NPO法人 くすり・たべもの・からだの協議会 静岡市 午後2:30から90分(理事長 山田静雄 静岡県立大学大学院薬学研究院)対象:一般市民、薬剤師など
●6月3日(土)19-21時 第4回認知症サポート医等連携の会(千葉県医師会館3階会議室)基調講演 社会的疾患「認知症」を理解し、医師として機能するためにーコウノメソッドの活用―
●6月4日(日)朝10時 千葉市一般講演 会場が取れなければ中止。
●8月20日(日)正午 社団法人抗認知症薬の適量処方を実現する会 第三回特別セミナー 品川 演者:長尾、河野、平川

圧巻だったNHK SONGS宇多田ヒカル特集
説明するまでもなく、彼女の生い立ちは特殊で一般人の育ち方としては健康的ではなかった。昔の彼女をテレビ画面で見ると私も不安を感じた。目が落ち着かない、あまりに暗い。母親が藤圭子なので、当たり前と言えるのだが、色気の暗さならいいけれど、彼女の場合、自殺を想起させるような病的なものだった。

6年ぶりに見た彼女は、安定した母親になっていた。本人が言うように子育てのために規則正しい生活をしなければならなかった。アメリカ生活のため、誰からも普通の人に見られて楽だった。歌手に復帰できたのは精神と体調を整えてくれた子供の存在が大きい。子供がいなくて母親の死だけを引きずっていたら復帰できなかったと。

聞き手が糸井重里なのは、よかった。彼女の使う難解な言葉を理解できる数少ない大人。音楽番組なのに、ほとんど対談。それでも私は途中でチャンネルを変えることはなかった。本邦初公開の曲が3曲。おそらく口パクではなく本当に腹から声を出し、すべてに新しいセットを組んでいた(CGではないと思われる)。紅白歌合戦の出演を条件に高額な予算を使ったであろうNHK。彼女がすんなり紅白に出たら、本当に大人になったのだねと歓迎したい。

自分は幸い結婚できたが、やはり結婚して子供を育ててというあたりまえの生活でない国民が増えると何かひずみがおきやしないと心配になる。昔は干渉好きな近所のおばさんたちが、無理やり見合いさせたものである。そのときは、煙たく感じても老後になってありがたかったと皆思うはずである。頑固爺や大阪おばちゃんは、本人が生きているうちには感謝されないかもしれないが、人類の滅亡を防ぐ大切な存在なのだと、私は信じて疑わない。